【対談】 「指示型」から「自己決定型」へ。生徒を導く、進路支援のあるべき姿とは

UP DATE 19.03.18
インタビュー

株式会社リクルートジョブズに7年間勤務した後、公立高校の夜間定時制クラスの担任を務める井波祐二さん。教師になろうと決意したのは高校時代の進路面談の時。同じく高校時代から「就活」に疑問を感じていた、NEWGATE代表の永田謙介と、若者のキャリア形成や教師のあり方について語ってもらいました。

 

Q 高校生の進路選択における課題は何だと思いますか?

 

井波さん:高校生の進路選択で一番重要なのは「自分で決めること」だと思います。「先生に言われたから」「親に言われたから」ではなく、自分が何者なのかをしっかり考えて進路を決めてほしいです。難しい事だと思いますが、自分が選んだ道を自分で正解にしていくつもりで決めるといいと思います。

 

 

永田:全く同じ考えです。「高校生だから自分で意思決定できない」とスクリーニングしてしまう先生が多く、とても疑問に思っていました。教師こそ諦めずに、生徒が自分で決められるように促してあげなきゃいけないですよね。決めきるのは難しいことですが、生徒が自分自身と向き合うきっかけにはなるので、次に踏み出す一歩のヒントになると思います。

 

Q 教師になろうと思ったのは、いつ頃でしたか?

 

 

井波さん:小学校3年生の時にとても好きな先生がいて、その時から教師への憧れがありました。本気で教師を目指そうと思ったのは、高校3年の進路面談のとき。その経験が原点となり、教師になる決意をしました。

野球部に所属していたのですが、引退した後ひどい自己喪失感に陥ったんです。甲子園を目指して野球しかしていなかったので、これから何をしていけばいいのか全然わからなくて。進路面談の時は、その場しのぎで「教師になりたい」と答えたのですが「それなら政治経済学部がいいんじゃない?」と先生に進路を提示されました。自分のモヤモヤは解消されず、さらに悩んでしまいました。その時、きっと自分みたいに悩んでいる人は他にも沢山いると思い、将来自分が教師になろうと決めました。

 

 

永田:本当にその通りですよね。先生もそうでしたが、私は高校時代のクラスの友人にも違和感を覚えました。将来を深く考えず学部を選んでいるのを見て「大丈夫?」って思ってました。

 

Q 大学卒業後、なぜ企業への就職を選んだのですか?

 

 

井波さん:大学卒業前に「なぜ就職するのか」「どうやって生きたいのか」ということを、とにかく考えました。最終的には「どう死にたいか」という問いに行き着き「自分の人生に誇りを持って人生を終えたい」と思ったんです。それなら、誰かの人間形成に深く関わる仕事に就きたいと考え、改めて将来的に教師になろうと決めました。

永田:教師になる前提で、就職されたということですね。

井波さん:そうですね。「いま教師になって、自分に何ができるだろう?」と真剣に考えたとき、今の自分では教壇で何も語れないと思ったんです。だったらまずは就職して、生徒をつなぐ先の社会を自分の目で見て、何か語れるものをつくらなければと思いました。

 

Q 教師として働いてみて、予想と違った点はありましたか?

 

 

井波さん:うちの学校は例外だと思いますが、よく耳にしていた学校や職員室の「閉鎖的な雰囲気」はあまりないですし、教師同士のコミュニケーションも活発です。予想以上に教師の自由度も高く、各教科の裁量が大きいので、生徒に与えられる影響も大きくやりがいを感じています。
学校としては、進路ガイダンスを年に3、4回行い、自分自身の進路を考えたり情報提供したりする場をつくっています。また、外部の社会人ゲスト講師を招き、様々なロールモデルと出会う機会もつくっています。

永田:そういうのを敬遠する学校も多いですよね。

 

 

井波さん:キャリアを含め、自分の将来を考える場はどんどん設けたいですね。前例がないからやらないというのは、思考停止な判断でしかなく、そもそも何に気づき何を学び取るかは、生徒ひとりひとりが決めるものだと思います。教師の主観で生徒たちの機会を制限すべきでないと、自分に言い聞かせています。

 

Q今までで、印象に残っている生徒さんはいますか?

 

今年、ある女子生徒が企業のアルバイトを通して、経理兼デザイナーの枠で正社員として就職が決まったのですが、それはとても嬉しかったですね。日頃の授業を通してデザインの才能があることはわかっていたので、その企業の情報を彼女に提供しました。フォトショップを未経験からはじめ、今も熱心に頑張っています。彼女みたいに、実経験を通して納得した上で就職できる生徒を増やしていきたいですね。

 

Q企業を経験してから教師になる、一番のアドバンテージは何でしょうか?

 

 

井波さん:生徒がもっている能力や学校で培う力が、将来社会でどのように役に立つかを、具体的なシーンを例にして語れるところだと思います。
「思い立ったらすぐに行動に移せる」など、生徒の定量化、可視化できない力や行動特性を評価してあげるのが重要で、それを教師がどのように生徒に伝え、フィードバックできるかが課題だと思います。「君の強みが、社会ではこんなふうに活かせるよ」と伝えることで、より将来を描きやすくなると思うんです。

 

 

永田:生徒たちも、一度企業を経験している教師には進路を相談したいと思ってくれそうですよね。

井波:生徒との信頼関係が前提ですが、それはあると思います。最近ある生徒に「仲間と起業したいのですが、どうすればいいですか?」と相談されました。それはやっぱり僕の今までのキャリアを踏まえて、聞いてくれたんだと思いますね。逆に、私ではわからないことは、他の先生に相談していると思います。

永田:そうですよね。大学を卒業してすぐに教師になった人でも、しっかりと社会や企業に目を向け、その上で授業設計やキャリア相談をやっていけば、生徒からの信頼を得られると思います。

 

Q今後、挑戦していきたいことはありますか?

 

 

井波さん:いろいろありますが、今はキャリアカウンセリング理論を教員仲間とともに学び、教師の間に広めることにチャレンジしたいです。「君にはこれが合っているよ」という指示型のアドバイスではなく、自己決定を支援するのがキャリアカウンセリング。生徒とのコミュニケーションをちょっと変えていくだけで、生徒から引き出せる言葉がだいぶ変わってくると思います。

 

 

永田:自分で決められるように、ヒントを与えることのできるカウンセリングが理想ですよね。キャリアコンサルタントの資格は僕も持っているのですが、せっかく取得したのに普段その知識を活かせていない人ってきっと沢山いると思います。そういう人達を巻き込んで、今後何かアクションを起こしていきたいです。

 

対談を終えて

高校時代から「進路決定」のあり方に疑問を感じ、若者たちを支える事を人生のミッションとしているお二人のお話を聞き、キャリア教育の未来はきっと良い方向に変わっていくだろうと希望を感じられる時間になりました。

 

 

「進路を決める」ということに対して、限られた選択肢しかないと感じている学生はまだまだ多いと思います。しかし進学、就職、インターンなど、無限の可能性から未来を選べるのだと若者たちが思えるように、そしてチャンスを掴む手助けをできるように、教師陣のみなさんを巻き込みながら、これからもNEWGATEは活動していきたいと思います。

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